こんにちは。お久しぶりです。大学とかいうカスに精神と時のキャパを押しつぶされて全く何も書けませんでした。かと言って全然そっちもアレなのでアレですが。

それはさておき、今回書く内容についてですが、前回書いた話数ごとの感想ではなく、「守備のシフト」についての内容になります。私は、外野手なのですが、守備というものが本当に大好きでして、高校球児だった頃はかなり守備に力を入れてやっておりました。引退してからもその点は特に変わらず、2018年春のセンバツ膳所×航空石川戦の録画を残してある、と高校野球部時代の同期に先日話したところ「キモっ」と一蹴されました。そんな感じで守備のシフト、というかなり狭く絞った内容の記事になりますので、個人的な考え方をまとめつつ、球詠読んでるけど野球よくわかんねえよという方に補足、解説になれば嬉しいところです。

 

 

シフトとは?

まずはじめに、この画像をご覧ください。

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一二塁間に野手が4人いますね。このシフトは、1アウト満塁のサヨナラの場面で引っ張りの傾向が強い打者に対して取られたシフトです(画像には映っていませんが、三塁にも1人野手がついています)。このシフトは何のために取られているのでしょう?答えはもちろん勝つためです。この画像の場合は特にサヨナラの場面ですから、1点でも入ってしまえば負けというかなり緊迫した場面です。ここで、シフトとは、勝つための守備の作戦であると、言わせていただきます。

守備の目的

シフトはかなり目で見てわかりやすい守備の作戦ですが、そもそもなぜそんなことをするのか、その目的を確認しましょう。野球の守備の目的は、1イニングなら3つアウトを取ること、1試合通してであればより少ない点に抑えることです。アウトの取り方と言ってもいろいろあり、ゴロやフライには野手が関わりますが、三振を取れば野手は関わってきません。

「じゃあ、全部三振取れればそれでいいんじゃないの?」もちろん、そうなるのが一番といえば一番ですが、そんなことはそうそう起きません。全部三振が取れるのならばフィールド上に野手は9人も要りません。あなたは野手としてフィールドに立つとき、常に打球に備えなければならないのです。

打球に備える

しかし、ここで一つの疑問が出てきます。打球に備えると言っても、どんな打球に備えるのか?という疑問です。この疑問は、前述の「アウトを取る」、「より少ない点に抑える」という二つの視点によって解消することが出来ます。

アウトを取る

まずは、アウトを取るという視点から考えてみましょう。アウトを取るとはどういうことでしょうか、逆を言えば、アウトが取れないとはどういうことでしょうか?そうです、アウトが取れない=ヒットを打たれるということです。さらに言いかえると、野手のいないところ(もしくは野手の手の届かないところ)に打球を打たれるということです。こうなると、守備側のやることは自ずと決まってきます。アウトを取る=ヒットを打たれない=ヒットゾーンを出来る限り狭めるということになります。

次に、野球場の形を思い浮かべて見てください。投げて取らなければいけないピッチャーとキャッチャーを除くとして、このフィールドを7人で守るとしたら、どのように野手を配置すれば良いでしょう。内野は打者に近い分、打球が早く飛んできます。そうなると、なんとなく外野より人数が多く必要な気がしてきました、あとベースとかランナーもある程度面倒を見てやらないといけません。外野は打者から遠いですし、多少少なくても大丈夫でしょう。とは言え、内野に比べたら圧倒的に広いので多少人数は必要なはずです。

上記のことを踏まえると、内野の人数をちょっと多めにして、ヒットゾーンを狭めるために野手を等間隔に配置します。そうすると、見覚えのある形が浮かび上がってきます。そうです!いわゆる、定位置です!守備のシフトと聞くと、どうしても極端なものを思い浮かべてしまいがちですが、定位置もれっきとしたシフトです。打者について何も考えなければ一番ヒットゾーンが狭いので、守備のシフトを取る際の基本の形になります。

しかし、定位置についただけでは、残念ながらアウトが取れない場合があります。先に書いたように、打者はアウトを取られないように出塁することを目的とします。もちろん、全員が全員同じタイプの打者ではなく、打者によって出塁するための方法は異なるからです。例えば、足の速い打者であれば、セーフティーバントをして打球が転がる間に一塁に間に合わせようとしますし、パワーのある打者であれば、外野の頭を超す打球を打とうとします。これらの場合、前者はサードを前に出してセーフティーバントにも対応しやすい位置で守りましょう、後者なら、外野は定位置よりも後ろに下がりましょう、こうして、定位置とは違うシフトが完成しました。

ここでも、また一つ疑問が発生しました。「パワーのあるバッターで後ろに下がったら、外野の前のヒットゾーン広くなんね?」そうですね、広くなります。でも、後ろに下がることには、ある考え方を使うことによって、そのデメリットを補って余りあるメリットが浮かび上がります。その考え方とは、守備の時は常に最悪の事態を想定することです。パワーのある打者での最悪を考えましょう、ホームラン?マジで最悪ですね、でも、さすがにホームランまでとなると守れないので、ホームランキャッチの妄想でもしておいてください、最高ですね。僕も何度もしました。冗談はさておき、パワーのある打者での最悪は長打です。外野の頭を越されてしまえば、2塁、あるいは、3塁、ひょっとするとホームまで一度に行かれてしまいます。しかし、外野が後ろに下がって長打を警戒するシフトを取ればどうでしょう、パワーのある打者の長打のリスクが減り、代わりにポテンヒットなどの単打のリスクは増えましたが、定位置のままで守って長打のリスクが高いままであるより余程マシになりました。このように打者のことを考えて守る場合は最悪の事態=打たれることを想定して守ります。

より少ない点に抑える

続いて、より少ない点に抑えるという視点から考えます。野球では、状況に応じて、先ほどの打者に対してとるシフトではなく、点を防ぐことに特化したシフトを取ります。例えば、0もしくは1アウトランナー三塁の時にとる内野の前進守備です。前進守備では、内野に転がる弱いゴロ、あるいは、攻撃側のサインプレーによるスクイズによる得点を防ぐために内野手が全体的に前に守ります。

しかし、この前進守備には一つの弱点があります。それは、内野が前に出てくることによって、打球が来るまでの時間が短くなり、ヒットゾーンが広がってしまうということです。そのせいでヒットを打たれ、アウトも取れず、また次なる得点のチャンスを与えてしまうことにもなりえます。この弱点は、解消することは出来ません、一方で、このリスクを負う必要のない状況は存在します。その状況とは、一つ挙げると、大量得点差で勝っているという状況です。大量得点差で勝っている状況であれば、目先の1点くらいは無視してもダメージはないですし、それよりも今取れる可能性の高いアウトを取ることの方がずっと価値があります。

また、得点差にゆとりがある状況で得点のリスク(=より先の塁に進まれる)を下げることを考えれば、先述したパワーのある打者に対して、より長打のリスクを下げるために通常よりも後ろに下がって守る(あるいは、長打が来るという意識を強めに持って守る)という選択もとれるようになってきます。

守備で何を優先するのか?

ここまでで、なんとなく守備につく際の基本の考え方を書きました。軽くまとめつつ個人的な考えを述べると、私は守備においての優先度は基本的に状況が最優先になると考えています。考えてみますと、三塁にランナーを置いている場面だとか、一打サヨナラの場面なんかはほとんどの場合で内野前進だとか、外野前進の形をとるわけで、かなり状況を優位に考えてシフトをとっているわけです。さらに言えば、極端なシフトを引いて守ることのあるような打者が打席に立っているとしても、ランナーが塁上にいれば必然的にランナーがいることを考えてシフトをとるはずです。ゲッツーシフトや、バントシフトはその最たる例でしょう。しかし、上にあげたような状況の方が優位になる場面というのはそこまで多くない(特に内野手に比べて外野手は)ので、実際には打席に立つ打者を優先して(状況が存在しないので)シフトを変えるということが多くなるのです。

高校野球の打者へのシフト

先程のパワーのある打者などから少し一歩進んで、具体的に高校野球の打者を思い浮かべていただきます(理由は言うまでもなく、球詠が高校野球の話だからです。後は私のレベルです)。高校野球の打者というのは、プロと比べれば当然、あと、プロに行くような選手などと比べれば、打者のレベルの水準はあまり高くありません。このレベルの高くなさ、(個人的には、洗練されていない、癖が残ったといったように呼んでいます)は大きく守備のシフトに影響してきます。このような打者の癖、具体的には、打球の飛んで来やすい方向、飛んで来にくい方向がなんとなく決まっているということですが、これを守備のシフトに生かさない手はないからです。

球詠でのシフト

ここで(ようやく)例として球詠を参照しましょう。(球詠のブログなのに球詠の話が出てくるのが遅すぎるぞーっ!) 球詠原作2巻第12球、アニメ第6球の対守谷欅台戦での場面です。引っ張り方向の強い打球が多い相手の3・4番打者に対して下記のようにシフトを取りました。

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このシーンでは、原作では画像のように外野はセンターとライトが後ろに下がり、センターはライト寄りに守るという風になっていました。しかし、アニメの方では…

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なんでレフトが下がってんだよ。

私はここで死にました。確かに、3・4番という打順を考えれば、レフトが下がることにも疑問を持たない方は多いかもしれません。しかし、先程書いたように、高校野球の打者のレベルはあまり高くありません。そのため、高校野球のバッターは、かなり実力のあるバッターでない限りはそう逆方向に大きな打球を飛ばすことはありません。そのため、この場合のシフトを私は以下のように考えます。

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これは推測になりますが、原作では、レフトは定位置のままか、もしくは私が考えているのと同じように、センター寄りに守っていたのではないかと思います。原作の描写では、「外野は少し下がろっか」のところで描かれているのはセンターとライトのみですし、この辺りに、レフトは下がっていないというマウンテンプクイチ先生の意図を感じることが出来ます。しかし、アニメでは明らかにレフトも下がっている描写がなされています。どうしてそのままセンターとライトだけを映す構図にしなかったんだ!

さておき、この場合のレフトが左中間寄りにポジショニングをとる根拠ですが、それは、センターが右中間寄りにポジショニングをしたことによって発生した左中間のヒットゾーンを減らすためです。一般的に左バッターのレフト方向への打球はレフト線の方向に切れる(回転によってだんだんとレフト線方向に流れていく)と言われています。このことを考えると、右中間方向に寄って守っているセンターは必然的にセンター定位置よりレフト側の打球に対しては追う形(=切れていく打球に逃げられる形)になり、捕球する難易度は通常の打球よりも高くなります。しかし、打球が近づいてきてくれる側に守っているレフトを左中間に寄せることである程度レフトに任せられるようになり、カバーが効くようになります。

また、レフトが左中間に寄ってもいい根拠として、バッターが引っ張り傾向であることがあります。打者のレベルが高くない分、流し打ちまで器用にできるわけではないとした場合、打者の打球の飛びやすい方向は、センターが右中間に寄ったのに沿うようにして、全体的にライト方向に寄っていると考えられます。その場合、レフト線方向(=レフトよりレフト線側への打球)は飛んでこないと考えて切り捨てられます。この時、レフト線方向の打球であれば、仮に飛んで来たとしてもダメージは少ない(=打球があまり強くなく、単打で抑えられる。または、長打になるような打球でも、三塁が近いため三塁打の可能性は低い)ことも重要です。

最後に

ここまで守備についていろいろ書きましたが、あくまで守備は勝つための作戦の一つに過ぎないという認識は非常に大切です。というのも、たくさん点を取る自信があるならば、アウトを取ることを一番に考えて守ってもいいし、逆にそれがないならば、意地でも点をやらないような守り方が求められます。

書きたいことがまだ微妙に残っているのですが、球詠最終話の放送時間が迫っているので、それはまた次に回したいと思います。