内野5人シフトを救いたい。

本日3月21日、センバツ高校野球木更津総合×山梨学院戦にて、延長13回裏木更津総合の攻撃、タイブレークにより無死一、二塁で攻撃開始の場面において、守備側の山梨学院により「内野5人シフト」が試みられた。それを受けて、このブログを書きたいと思う。

はじめに~山梨学院の内野5人シフトの新しさ~

”バント阻止のための”内野5人シフト

場面は、前出のように、同点で1点取られればサヨナラ負けという場面だ。守備側の山梨学院は、1点でも取られると負けという場面において、1アウトでランナーが三塁にいる―つまり、スクイズ、エンドラン、犠牲フライ等々、1点を取るための作戦を取りやすい―状況を作らせないように絶対にバントを阻止するための内野5人シフトに踏み切った。

結果としては、木更津総合の3番打者がヒッティングをし、レフトフライとなり、二塁ランナーがタッチアップをしたことで結果的に1アウトでランナーが三塁にいる場面となった。

自分はこのようなバント阻止のための内野5人シフト見たことがなかったため、驚き感動した。そのため、今こうして文章を書いているのである。

 

これまでの内野5人シフト”本塁生還阻止”

今回のものに対し、これまで一般的に「内野5人シフト」と言われて思い浮かべるものを書く。これは、今現在、Twitter上で「内野5人シフト」がトレンド入りしていることで、特に試合を観ていないにもかかわらず、その文字だけに反応している人たちが言っているような「内野5人シフト」のことだ。

上記ツイートのように、原辰徳がやった”アレ”、そして、このツイートの日のオリンピックでの日本×アメリカ戦でのもの、どちらも1アウト二、三塁で試みられた。

この二つの「内野5人シフト」に共通するものは、どちらも三塁ランナーの本塁生還阻止を目的とするものである。

原辰徳のアレはバカにされてもしょうがないと思っているので、触れないが、オリンピックでの内野5人シフトは、今回の山梨学院と同様に同点で1点取られればサヨナラ負けの場面だった。

まとめ

こうして、二種類の「内野5人シフト」を並べると、山梨学院が試みたのは、同点で1点取られればサヨナラ負けの場面において、本塁生還阻止が絶対条件となる1アウトでランナーが三塁にいる場面(これもまた、「内野5人シフト」をとってもいい場面)を作らせないため、より追い詰められた場面にしないために先手を打つ、より攻撃的な「内野5人シフト」だったと言えないだろうか。

 

内野5人シフトにおける”捨て”

野球におけるあらゆるシフトには、目的のためにある程度、打たれた時点で捨てる・諦める打球が存在する。以下に述べるオリンピックの試合でも、打たれた瞬間に外野手が諦めていたのを覚えている方も多いのではないだろうか。

他にも例を挙げると、1点が試合を左右する場面での外野前進守備での長打、あるいは対強打者シフトでは、極端な打ち損じでの単打、極端なことを言えば、ホームランはいかなる場面でも”捨て”の打球と言える。

上記二つの「内野5人シフト」においては、同点で1点取られればサヨナラ負けという場面の苦しさから、”捨て”の打球を増やさざるを得ない。以下より、オリンピックでのケースから順に、”捨て”の打球について考えたい。

オリンピックの内野5人シフトでの”捨て”

オリンピックの内野5人シフトの内野ゴロでの本塁生還阻止という目的、外野手が二人になったことで外野が広く空いている1アウト二、三塁という状況から考えると、ヒット、ホームランを除いた外野手にとっての”捨て”の打球は以下のようになる。

・長打(このケースで結果的に打者が打った)

・外野の正面に来ないヒット性のライナー(ギリギリで捕るようなものを想定)

・タッチアップをホームで刺せない深さのフライ

・刺せるかどうか際どい深さのファールフライ

上記のように”捨て”の打球に「タッチアップをホームで刺せない深さのフライ」が含まれているように、刺せない深さで守っていてもしょうがないため、この場面での外野手は三塁ランナーのタッチアップを刺せるかどうかギリギリの位置デッドラインとして守ると理論的には言える。この基準から外野手の守備位置がなんとなく定まり、同時に真逆と言える”捨てない”打球も見えてくる。

外野手の二人は、自分が立っている位置より後ろはケアせずに済むため、守らなければいけない範囲は必然的に見た目以上に小さくはなり、かつ、フライなどの滞空時間によっては、送球がしやすいように回り込むことも可能だ。

実際には打者によって守備位置を微調整し、二人の外野手でできる限り”捨て”の打球が増えない守備位置をとることになり、そうすると、必然的に中間地点のセンター付近が空きやすくなる

山梨学院の内野5人シフトでの”捨て”

山梨学院のシフトの目的は、特にバント阻止が主な目的であるように見られたが、この目的をより根本的に定義すると、二塁ランナーの1アウト以下での三塁到達と言える。

山梨学院の守備では、内野をバントシフトにしつつ、二人の外野手は、レフトとセンターの位置に守り、空いているのはセンターではなくライトだった。つまり、二塁ランナーが三塁によりタッチアップしやすいライトへの打球は捨てていたということだ。

結果としては、レフトが後退して捕球する打球により、二塁ランナーの三塁到達を許してしまったが、「内野5人シフト」を試みるにあたっての方針は間違っていなかったことのある種の証明として機能しているのではないか。

あの場面において、ヒッティングを選び、そして守備側の想定を上回るような打球を放った木更津総合の打者が素晴らしかったというのがあのプレーを評価するに最も適していると思いたい。

 

ほぼおまけとして~内野5人シフトの根本的な弱点の考察~

極端なシフトのマイナス点として、意図があまりにもはっきりしているため、配球などが読みやすくなることがあると思われる。本塁生還阻止なら、当然フライを打たれないに越したことはないので、低めの投球が増えること。今回の山梨学院のケースでは、ライト方向に打たせないためにインコースの投球が増えることなど。打者の得意コースなどとの兼ね合いでは、極端なシフトを取らないことも選択肢の一つと見るべきなのではないか。

 

おわりに

1000万年ぶりにブログを”公開”しました(途中まで書いてまとまらなくてほっぽったりしたので。)

あと、書き始めたときに思っていたよりも、外野守備要素が多くなりました。

ランナー三塁のケースの”捨て”として、構えている位置より後ろのフライを書いてはいますが、流石に多少なら(当たり前だけど)努力するべきだと思います。圧をかければかけるほど、離塁が早いとかの類のミスも狙えるので、頑張った方がいいです。

色付けたりしましたが、特に意味があったりするわけではないので気にしないでください。読みづらかった、読みやすかった、そういう感想・改善点あればぜひ教えてください。ここまで読んでくださりありがとうございました。おわり。